芸術としてのバレエの歴史|舞台芸術としての4要素〜衣装・振付・美術・バレエ音楽

EYS-KIDS編集部

芸術としてのバレエの歴史 

バレエは500年以上の歴史があり、衣装、振付、 美術(装置)、バレエ音楽の4要素からなる複合的な舞台芸術です。本記事では、芸術としてのバレエの歴史をご紹介します。

【バレエの起源】15世紀:バッサダンス〜バレエ

バレエは、ルネッサンス期のイタリア宮廷で余興として踊られていた「バッサダンツァ」から派生した「バッロ」がバレエの起源であるとされています。イタリアの名家メディチ家の娘がフランス国王に嫁いだことから「バッロ」が広がり、フランスの宮廷ダンスを「バレエ」と呼んで、貴族や富裕層の間に浸透していきました。

【フランスのバレエ】16〜17世紀:宮廷〜劇場へ

国王ルイ14世自身もバレエを踊り、王立舞踊アカデミーを創立しました。17世紀末には舞踏教師ピエール・ボーシャンによって「5つの足のポジション」が定められ、表現技法などが体系化されていきました。バレエは宮廷から劇場に移り、劇場設備の整ったオペラ座の建設によって、職業ダンサー、音楽家による舞台芸術が確立されていくことになったのです。

【ロマンティックバレエの誕生】19世紀半ば

フランス革命後のロマン主義の影響を受けて生み出されたバレエです。妖精や悪魔を主人公とした幻想的な作品を特徴としています。『悪魔のロベール』『ラ・シルフィード』『ジゼル』が代表作です。

【クラシックバレエの誕生】19世紀後半

ロマンティックバレエが ロシアに移り、古典主義のクラシックバレエへと発展しました。 身体表現技法が複雑になり、現代のバレエスタイルが確立されたのです。『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』が代表作です。

【モダンバレエの誕生】20世紀

ロシアのバレエ団「バレエ・リュス」がパリで新作を公演しました。19世紀までのバレエとは異なるモダンダンスの要素を取り入れた革新的なものでした。『火の鳥』『春の祭典』が代表作です。

芸術性の高い「舞台衣装」

舞台衣装はバレエの歴史と深く関わっています。ロマンティックバレエでは、それまでの宮廷ダンスよりも身体表現技法が複雑になりました。それに伴って、衣装も進化を遂げることになったのです。

ロマンティック・チュチュとポワントの登場

1932年『ラ・シルフィード(空気の精)』で、主演のマリー・タリオーニによって、初めてチュチュを着用し、ポワントで立ったとされています。この時、衣装を担当したユージェーヌ・ラミがロマンティック・ チュチュの発明者です。マリー・タリオーニの回転や静止などのポアントでの技術や表現力の高さから、芸術的なバレエへ革新がなされていきました。

衣装の形だけでなく、色彩も重要視されるようになり、白やピンクから演目によってさまざまな色が取り入れられるようになっていきます。

芸術作品を創り上げた「振付家」

フランス人振付家マリウス・プティパが創り上げた多くの芸術作品は、死去して100年以上経った現在も受け継がれています。バレエを楽しむなら知っておきたい巨匠です。

1877年に初演された『白鳥の湖』ライジンガー版は不評に終わったものの、1895年にはマリウス・プティパとレフ・イワーノフ版によって、最も愛される作品となりました。

プティパの特徴は、作品のストーリよりも難度の高い技術を盛り込んで、振付の視覚効果を最も重視しました。観る人に驚きと感動を与えるグランフェッテ32回転(白鳥の湖、ドン・キホーテなど)もその1つです。プティパの存在がなければ、クラシックバレエがこれほどまでに発展しなかったといっても過言ではないでしょう。

芸術としてのバレエ世界を創る「舞台美術」

舞台美術は、視覚と聴覚を統合させて高い芸術性を創り上げます。1945年に公演された『旅芸人』の舞台美術は、画家で舞台美術・衣裳デザイナーのクリスチャン・ベラールが手がけ、パリの街や大衆までも描き、作品にリアリティをもたらしました。

観ている人をバレエの世界に引き込むのが舞台芸術です。舞台芸術によって芸術としてのバレエは、バレエダンサーの表現力だけでなく、舞台美術とともに成り立つといえるのです。

バレエ音楽を生み出した「芸術家」

19世紀後半まで、バレエ音楽は主にダンス用の伴奏という形で作曲されるものがほとんどでした。ですから、交響曲の作曲家・チャイコフスキーによってバレエ音楽は芸術作品となり革命をもたらしたといわれています。3大バレエを作曲した2人の芸術家をご紹介します。

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー3大バレエ

『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』の3曲は、チャイコフスキーの三大バレエとして広く知られています。バレエの歴史を語る上で不可欠な芸術家です。チャイコフスキーは、バレエ音楽をこの3つしか作っていません。

振付家プティパが作品の構想として、バレエの動きに対するテンポや小節数など細やかな依頼をしたといわれています。チャイコフスキー自らがオーケストラの指揮をしてバレエ音楽とバレエ作品を同時に普及させました。

イゴール・ストラヴィンスキー3大バレエ

『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』を作曲したストヴィンスキーは、20世紀を代表する作曲家です。ロシアバレエ団を率いていたディアギレフに依頼された3大バレエの音楽を作曲して成功を収めました。

ストラヴィンスキーは、幼少の頃に観たチャイコフスキーの『眠れる森の美女』によって、バレエに関心を持ったといわれています。バレエ音楽やオペラなど多くの作品を作りました。3大バレエの他に、代表的な作品として『プルチネッラ』『結婚』『ミューズを導くアポロ』『オルフェウス』があります。

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最後に

バレエの芸術性を語るとき、バレエダンサーに注目されがちですが、衣装・振付、美術、バレエ音楽の4要素の融合がなければ成り立ちません。バレエ作品を観たり、バレエ音楽を聴いてみたりして、長い歴史を経て受け継がれている芸術としてのバレエをもっと身近に感じてみてください。

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