幼児へ英語教育を行なう意味はある?賛成派・反対派いずれの意見も交え紹介

幼児期から英語を習わせるべきか悩ましい

「英語は早い方がいいとは聞くけど」「子どものうちに英語を始めれば、あまり苦労せず英語を身につけることができる」とお子さんの将来を思う親御さんも多いのではないでしょうか。
親御さん自身が「英語で話すことが苦手」という方もいらっしゃるかもしれません。幼児期から英語に取り組めば、そういう苦手意識をもつことなくまなべるかもしれません。幼児期にはそういう親御さんの期待がこめられる時期ともいえます。

そもそも幼児期に英語教育を行う意味はある?もっと大きくなってからでもいい? 迷うことも多いかと思います。
幼児教育に英語を習わせることの賛成派、反対派のご意見をご紹介します。

【賛成派】幼児教育から英語を習わせるべき3つの理由

①言語習得には臨界期が存在する

澤口は、幼少時から多言語に接触し、どの言語も母語話者並みの流暢さで話すことができる「初期マルチリンガル」と、1つの言語を母語とし時間差を持って多言語を習得した「後期マルチリンガル」の脳レベルでの言語処理を比較して、後期マルチリンガルでは母語以外の言語処理が母語を処理する言語野を介して行なわれると述べている。
無意識に習得する母国語と同じように、外国語である英語を生まれてすぐから聞いて獲得させようとするなら臨界期以後の外国語習得の成功率は低いと強調している(わがままな脳.澤口俊之筑摩書房.2000) 。

こちらも澤口と同様の研究で、詳細な論文になっています。
(第二言語習得における臨界期仮設再考.吉川敏博.P.9バイリンガルの言語習得研究
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/repository/metadata/4077/GKH024301.pdf)

正高は、乳児には生得的に協和音や子ども向けの歌への選好傾向があり、人の発話はまずメロディーとして捉えられると述べています。文や節、句の音の変化や聴覚的なまとまりの良さを生み出し、それがパターン知覚を容易にします(子どもはことばをからだで覚える.正高信男.中公新書.2001)。

②音韻体系の習得の臨界期

Piagetは「言語習得適齢期」と「異文化順応適齢期」の側面からみて9歳を重視しています。
9歳の壁によれば、母語の能力は4~5歳で完成するとされています。9歳までに音声を聴き分ける能力が完成してしまうため、英語習得開始期が早期であれば、日本語、英語を話す能力が高まると考えられます。

高橋論文では、音韻体系の習得に関する研究をまとめています。その中で、語彙や文法の習得は子どもよりも大人の方が有利だと述べています。それは、大人の方が子どもよりも認知能力が発達している分、ことばの意味を相互に関連づけたり、長期記憶を活かしながら、新たな情報を既存情報と組み合わせることができるため、と説明しています。

語彙や文法以外の音韻体系の習得には、ほとんどの学習者に臨界期が存在するという意見が研究者の大勢をしめていると述べています。早期に学習を開始しなければ、ネイティブレベルの発音習得は難しいと考えられています(第二言語習得研究からみた発音習得と可能性についての一考察.高橋基治.東洋英和女学院大学 人文・社会科学論集)。

③言語習得期に英語を聴き、話す機会を増やす 

成田は、言語習得期に母語の獲得過程と同様に、英語のインプットを十分に与えアウトプットの機会も与えれば習得できるとしています。この時期に学習することは日本語を土台にして新たな文法を習得するのではないため、日本語と英語の差がなく獲得できると主張しています。(日本人に相応しい英語教育.成田一.松柏社.2013)。

 英語学習が成功した人は、年齢要因は顕著だが、結果におよぼすその他の要因として、学習動機と学習時の適切なフィードバック、インプット量、豊富なリソース(テレビ、ラジオ、ドラマ)を活用すること、発音を意識することなどをあげています(第二言語習得研究からみた発音習得と可能性についての一考察.高橋基治.東洋英和女学院大学 人文・社会科学論集)。

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【反対派】幼児教育から英語を習わせるべきでない3つの理由

①日本語で論理的に説明できることが先決

ノーベル化学賞を受賞した白川英樹・筑波大学名誉教授は、科学や芸術などの学問を日本 語で学び、考えることの大切さを説いています。日本語でしっかり考え、理解し、それを的確に伝達できるようにして、英語は必要になった時点で真剣に学べば、1年もあれば何とかなるもの、科学者であれ、ビジネスマンであれ、日本語がしっかり身に付いている人のほうが、より一層核心に迫った理解ができるし、発想の自由度がより大きいと感じている、と述べています。

②日本には一貫した英語教育がない

日本の学校教育には、一貫した英語教育がないため、教育内容にずれが生まれて英語嫌いを生み出す可能性があると主張しています。英語コミュニケーション能力を高めるには多文化という考え方が必要となり、そのためには自立性や主体性のある自己表現を行うこと、対話相手と関係調整を図る自己表現が必要であるとしています(田中茂範 他4名.幼児から成人まで一貫した英語教育のための枠組みECF.リーベル出版.2005)。

学習指導要領の告示(2008)によって「5~6年生を対象に週1時間の外国語活動(現実的 には英語)を導入すること」への現場教員は運用への不安と負担の増加から疲弊する一方、生徒には英語嫌いを増やす結果を招くという見方が示されています(危機に立つ日本の英語教育.慶応義塾大学出版会.2009)。

③低年齢での英語教育は困難である

佐藤(2000)は一連の(超)早期教育について、低年齢で始めた親子ほどあきらめてしまうのも早い傾向を指摘する。母語 でほんの少しのことしかできない年齢では、それ以上に英語が発達することはありえないことを肝に銘じるべきであると強調しています。

また、佐藤は、この著書の中で、勉強とは絶えず終わりを告げるもの、学びは絶えず始まりを行きつ戻りつするものとしています。三つの具体的な課題遂行として、第一の課題は、「モノや人のこと」との出会いと対話による「活動的な学び」を実現し、第二の課題は、他者との対話による「共同的な学び」を実現すること、第三の課題は、知識や技能を獲得し蓄積する「勉強」から脱して、知識や技能を表現し共有し吟味する「学び」を実現することとしています。
(「学び」から逃走する子どもたち.佐藤学.岩波ブックレット.2000)

佐藤が主張する三つの課題を実現するシステムの構築が、幼児の英語教育にも応用できることを望みたいと考えます。

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リトミック英語とは

音楽教育の中で取り入れられているリトミックと英語を組み合わせたものが、英語リトミックです。なぜリトミックに英語を取り入れるとよいのでしょうか?

成田は、母語の獲得過程と同様に、英語のインプットを十分に与えアウトプットの機会も与えれば習得できるとしています。その問題点は、日本の教育制度では早期英語教育を全面的に導入することは難しく、現実的には小学校高学年でようやく英語教育が実施されることであると強調しています(日本人に相応しい英語教育.成田一.松柏社.2013)。

英語の発音や会話力のためには、幼児期(乳児期を含め)からネイティブの英語に触れる環境であることが望ましいと考えられます 。

英語の歌をうたったり演奏することで、フォニックス(発音と文字の関係性を学ぶ音声学習法)を身につけることで、知らない単語でも、耳で聴いた音でスペリングがわかり、正しく書くことができるようになります。

幼児が英語獲得するためには、音楽や英語を聴きながら、楽器演奏や手遊びなどを楽しく、面白いという感情を伴って表現をすることと英語を聴いたり歌い話したりする機会を増やすことが求められると思います。聴くことと身体を動かすことを同時に行うことがより効果的であることは、リトミック創始者のダルクローズの考えでもあります。

リトミック英語から始めるのがよい理由について

幼児期での英語教育には、「英語を学ぶ」ことと「英語を使う」こと繰り返し行うこと、つまり、「使うことを通して学ぶ」という視点が必要になります。
幼児期からの英語教育のメリットとして、幼児の柔軟な適応力を生かすことが挙げられていますが、このメリットを生かし、「英語を使う」ことに好ましい印象を持つことができるかどうかが英語教育のポイントになります。

英語リトミックは、英語力をつけながらリトミックで身体を使い、表現力を高めることで、集中力、表現力、判断力、創造力などを引き出すことを目的としています。

英語リトミックでの表現の仕方は、話すことだけに焦点をあてていません。英語や音楽を感じて身体を動かし、楽器演奏、歌唱など表現があるからです。英語リトミックにはインプットとアウトプットの手段が豊富であるといえます。英語を音楽と同時にリズムを体感することで記憶に残りやすくなります。

家庭で、手軽にできるリトミック英語の教材は本屋さんや通販などでたくさん売られています。お子さんが興味をもって取り組めそうな絵や歌などを選んで都合のよい時間帯にできて、家族で楽しめます。毎日の暮らしの中で一緒に英語を学び、英語を使って会話をしてみることから始めてはいかがでしょう。

最後に

英語の賛成派、反対派のご意見はいかがでしたか?

幼児の英語教育でモチベーションとなるのは、英語の歌が面白い、英語のゲームが楽しい、英語の先生がカッコいい、友だちと一緒が楽しい、外国の人と話したいなど、お子さんの視点でいくつもあると思います。小さな目標をクリアしていく喜びをもって取り組むことで、学びの面白さや楽しさを感じてほしいものです。

英語は短期間で身につくものではありません。だからこそ、お子さんも親御さんもモチベーションを保つことが必要になります。幼児期は楽しさが最優先です。楽しいから続けることができます。英語が好きになることが、英語の習得の近道です。お子さんをサポートしたりアドバイスしたりしながら、親子で一緒に学んでいけたらと思います。

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